開業する先生に捧ぐ No14.開業してしばらくしたら、医療法人設立を考えましょう?
医療経営
クリニックを開業する先生に捧ぐ No14.【医療法人設立について】
個人クリニックで経営が軌道に乗り、利益が大きくなってきた頃、多くの方が検討する節税方法として、医療法人の設立があります。
クリニックの節税の「王道」ともいえるこの手法に焦点を当て、なぜ法人設立が有利になるのか、またデメリットはないのか、といったことを解説します。
- 所得税と法人税の税体系の違い
医療法人の設立が節税効果を持つ理由は個人への課税と法人への課税の違いにあります。
個人の所得に課税される所得税は累進課税で、所得が高くなればなるほど税額が高くなります。
一方、法人税は所得額による税率の違いが原則としてありません。
そのため、規模が大きくなればなるほど法人設立が有利になります。
現在、所得税の最高税率は45%、住民税等を加えると最高で55%程度、法人税は、持ち分のない法人や、出資金が1億円以下の法人では、所得が800万円超の場合23.9%、法人事業税などを加えた実効税率では30%前後となります。
- 所得分散と給与所得控除による節税
法人は法律上、私たち人間(自然人)と同じ「人」であり、院長と法人とは別人格です。
医療法人を設立すると、院長は、法人から役員として給与を受け取る扱いになります。
従来、高い税率の所得税を納めていた人は、法人所得と個人所得を分散することで、低い税額に抑えることができます。
法人の所得と個人の所得のバランス、それぞれの税額を考えながら給与額を設定することができるのです。
また、これまでの個人事業の収入を給与とすることのメリットとして、給与所得控除があります。
給与による所得には、一定の計算による金額が控除されるため、所得額が小さくなります。
以下、給与所得控除の計算方法です。
給与所得控除額
給与等の収入金額を「収入」給与所得控除額を「控除」と表示しています。
収入:1,800,000円以下
控除:収入金額×40% 650,000円に満たない場合には650,000円
収入:1,800,000円超3,600,000円以下
控除:収入金額×30%+180,000円
収入:3,600,000円超6,600,000円以下
控除:収入金額×20%+540,000円
収入:6,600,000円超10,000,000円以下
控除:収入金額×10%+1,200,000円
収入:10,000,000円超
控除:2,200,000円(上限)
所得がいくらあれば法人設立が有利になるのか、ということがよく話題になりますが、個別性が強く、一概には言えません。
目安としては、個人の課税所得が1,800万円超えたら検討をしてみるとよいのでは、ないでしょうか。
- デメリットも勘案してシミュレーションをしましょう
とはいえ、法人はメリットばかりではありません。
まず、所得を分散できるメリットと裏返しで、法人と個人双方の会計・税務を行う必要があり、業務量が増えることがあります。
法人は個人より税務書類が多く、さらに複雑です。
経理、税務関連の出費は高くなることは覚悟すべきでしょう。
法人化すると、税務の適正さへの目が厳しくなり、税務当局による税務調査が行われやすくなる傾向があるともいわれています。
また、法人は交際費の経費の全額計上ができないなど、税務の細かいデメリットもあります。
税務に関連して、法人は無条件で社会保険と厚生年金などの加入義務があります。
個人事業の場合、従業員が5人未満であれば加入義務はありませんが、法人は無条件で加入しなくてはなりません。
法人の社会保険非加入は、現在、問題視されており、厳格化される方向にあります。
以上、簡単に法人のメリットとデメリットを説明しました。
所得額だけではなく、上記のメリットとデメリットを、クリニックの状況と照らし合わせて分析し、税理士の意見も聞きながら、設立を検討してみては、いかがでしょうか?
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